「紘奈からは、どれだけ聞いている?」


子どものいない公園のベンチで、僕は斎木さんと話をしている。


“世界を変える方法”という話題もやはり好奇心をくすぐるが、それよりも斎木さんといる緊急で変な汗が絶え間なく溢れた。


「あ、なんにも…なんか変な数式みたいなのしか…」



プラスがどうの、マイナスがどうの、と紘奈が言っていたあの数式だ。

もはやどんなものだったか覚えていないけど、とりあえずへんてこだったことは覚えている。



斎木さんは少し笑うと、あの日紘奈が書いたものとまったく同じものが書かれた紙を差し出した。



“->0>+>-”



「これのことだろう?」

「あ…、はい。世界を単純化した、とか、ゼロが均衡を保つ、だとか…」

「その通りだ。人間はなにをしても、ゼロに戻る。他人のために善いことをしてその身を削った分だけ、報酬や見返りがある。世界の理だ。」



少し大きく言い過ぎじゃないだろうか…