玄関の鍵を開けるなり倒れこむ彼をぺちぺちと叩く。

「ほら、ベッドまでは自分で行って下さいよー。」

台所は好きに使っていいよと言われたものの、他人の家ではやはり勝手が違う。

「ニンジン、ピーマン…玉ねぎも使っていいかなぁ。」

小野さんが元気になりますようにと念じながら野菜を刻む。

自分の手料理に自信などないけれど、何とか力になりたかった。

「ん、ヘラはどこだろう。」


母から最初に教わった料理をこんな風に披露することになろうとは。

2個使いのたまごを慎重に返して、やっとオムライスができた。

ケチャップで
『お大事に』と書く。

よし。大丈夫。


「小野さーん、できたよ。」