「………」


気づけば涙が頬を伝って落ちていた。

何が悲しいのかなんて分からない。
何が辛いのかも分からない。

何にも知らず、ただ苦しかった…

しばらく雨の音と匂いに包まれて、
涙が自然と渇いていく。



―ッン―

雨の音に消されたけど
確かに何か聞こえた。

―キャ…ン―

犬?

今のは
犬だったよね?

犬だと分かる前に
私は駆け出していた。

声のする方へと
足を進める。

ふと木の下に
小さなダンボールを見つけた。

側へ行くと、クーンと小さな声がした。

いくら木の下といったって
濡れないわけではない…
ダンボールの角は
雨に濡れてよれている。