｢それにさ…｣
こっちを見て、
少し微笑みながらも緊張している。
握った拳、見えてるよ。
｢…この間、優しい子だなー…って思ったから｣
は？
この人は本当に私を分かっていない。
私なんかが優しいわけがない。
｢ごめんね？…私、優しくないんだけど…むしろ逆｣
｢………｣
話したこともないから、
私がこんな性格だって知らなかったんだね。
沈黙が流れる。
｢……じゃあ｣
突然、彼から声が漏れた。
｢こいつのこと、忘れたか？｣
ポケットから携帯を取りだし、
少しいじったかと思えば
目の前に画面をつきだしてくる。
｢……あ｣
そこに居たのは
小さな可愛い子犬の写真。
毛布の上でぐっすりと寝ている。
片方の耳だけ
白くなっている。
