「あなた有名だもの」
私は早く会話を終わらせたくて、あまり草川くんを見ずに口を開いた。
「えーっ悪い意味で?だったら悲しいなあ」
「もちろん良い意味で、だよ」
言うと同時に本を開く。
すると、ほとんどの人が私にはもう話しかけないんだ。
経験則ってやつ。
でもコイツは違った。
「何読んでるの?」
「――別に。“罪と罰”…見れば分かるでしょ」
「…難しそうだね。今度俺にも貸してよ」
「有名な作品だから、図書館にあるよ」
「そうなんだ?今度図書館案内してよ」
無駄にキラキラした笑顔で話しかけられるので、毒気がなくなってしまった。

