「体操着忘れた…」
腑抜けた声でため息を漏らした。
「あちゃー。他のクラスに借りに行く暇もないよねぇ」
「――う~ん…しょうがないから、今日の体育サボるよ。ごめんね…」
本当は、体操着忘れた自分グッジョブ!って思っていることは真美に悟られないよう、極めて残念そうに言った。
「ううん、気にしないで。私、先生から上手く言っておくから」
「そうしてくれると助かる。ありがと」
真美は私と違って、性格が良すぎる。
それだからこそ、私との相手ができるのかもしれない。
「いえいえ。じゃあ、行くね~!また後で」
真美を教室から出て行くと、いつの間にか教室はガランと静かになっていて、私は1人で教室で机に座っていた。
――そっか…。
みんな、体育でグラウンドに出てるんだっけ。
やっぱり1人はいい。落ち着く。
教室なんていつもは居心地の悪い場所だけれど、1人きりだと何だか自分だけ秘密基地みたいで思わず笑みが溢れてしまう。

