「「あ」」
つい、零れた声が被って見つめ合う。
濡れたままの髪を一つにまとめて、エンジ色の女用であるこの旅館の浴衣を着た、俺の幼なじみ。
因みに男はくすんだ青の浴衣だ。
「そ、蒼」
俺の名前を呼んだ美恋は、俺を見上げていて。
自然と上目遣いになってしまっているそれに、心臓が大きく音をたてた。
「何?」
「う、ううん、何でもない」
「そう?あ、知那待ってるじゃん、行かないのかよ?」
美恋の後ろの方にいる知那を見て言う。
美恋も振り返ってその姿を捕えると、ホントだ、と言って離れていく。
「んじゃ、明日ね!おやすみ」
「おう、おやすみ」
知那も俺の隣にいた空も同じように言葉を漏らして、俺達はそれぞれの部屋へと向かった。


