【海翔side】

「浅川くーん! こっちオレンジジュースねぇ」
「浅川君!! こっちにも来てぇ~」
「きゃー! 海翔君~!!」

 あぁー、うるせぇ…。俺は見せもんじゃねぇ!

「おぉ! 海翔めっちゃ人気じゃねぇか♪」
「…正直うるせぇ」
「まぁまぁ男に囲まれてる訳じゃねぇんだから」
「そうだけど…」

 確かに男に囲まれるよりマシだけどよ…。俺は奈緒が来てくれれば、それで良いんだよ…。

「海翔! 客だぞ」
「あぁ…」

 あぁー、めんどくせぇ…。

「ようこそ、ホスト倶楽部、スカイへ」
「えへへ、いらっしゃいました」

 はっ? 何この客何言ってんだし…。まるで奈緒みたいじゃねえか。

 俺は顔を上げた。

「!! 奈緒」
「もー、何で気がつかないの!?」
「わりぃ…。来てくれたんだな」
「もちろん!」

 やべぇ、めっちゃテンション上がってる。

 俺は奈緒を席に案内した。

「何飲む?」
「えっと…メロン・オレ♪」
「了解」

 予感は的中。俺は奈緒が好きなメロン・オレを皆の反対を説得させてメニューに入れた。普通は苺とかミックスとか何だけど…メロンだからなぁ…って思ってたけど奈緒の為だから頑張った! 良かった頑張ったかいあって。

「はい」
「ありがとう」

 俺は奈緒の向かいの席に座った。

「仕事良いの?」
「あぁ、奈緒が来てるのに仕事なんかしてられねぇよ」
「/////」

 たった一言言っただけなのに、こんなに真っ赤になる。コイツの前にいると俺が俺じゃなくなりそう…。

 チュッ。

 俺は奈緒の頬にキスをした。

「!!! なっ、何…してんの~!!」
「我慢出来なかった」
「うぅ…そんな笑顔で言わなくても…」
「ハハ、お前いつ当番?」
「えっと…午後だよ」
「行くわ、希一と」
「うん! 待ってる」
「サービスしろよ」
「えぇ~、じゃあ特別ねっ?」
「あぁ、じゃあご褒美」

 俺は奈緒の唇に触れるだけのキスをした。

「!!/////」
「また真っ赤」
「だっ、だって海翔が!!」
「もう一回してやろうか?」
「もう! からかわないでよ!」
「ハハ」

 俺は午後もこんな幸せな時間だと思ってた。でもその後の俺達には、こんな幸せな時間はなかった。この後俺達はこんな事になるなんて思ってもなかった。