無事バイトを終え三千円を受け取ると、まっすぐ銀行のATMの機械がある場所へ向かった。ATMに着けば不動産屋の口座にアクセスし、今月分の家賃を振り込んだ。
(やったーっ!家賃を無事払ったーっ!これで今月も無事暮らせる!)
ルンルンしてATMを離れると、携帯電話がメールを受信した。開いてみれば裕矢からだった。
-今日はありがとう。本当に助かったよ。お礼に今度、食事をごちそうするよ。-
(まだ私がご馳走していないのに……そんなに私を好きでいてくれるのかな?)
思わず笑顔がこぼれた。それくらい彼の恋を感じた気がした。
 ふと、ある思いが浮かんだ。
(ああいう人って、結婚したら良いダンナさんになるのかも……)
心がホッと暖かくなった。その日はまっすぐ家に帰ると、ちゃんとお昼ご飯を作って食べ、洗濯と掃除をした。少しお昼寝をすると、ロマンスに与えられた修行である『私は男運が良い』の続きを書き、夕飯を作って食べバイトへ行った。
 ロマンスは現れなかった。他にも信者がいて、そっちへ行ったのかもしれない。
(なんか、変な感じ……)
久々に一人きりになり思った。部屋が妙に広く感じた。
 結局、土曜も日曜もロマンスは現れなかった。
 月曜日、午前七時。カーテンの隙間から差し込む朝日に誘われるよう起きると、一度大きく伸びをしてため息をついた。
(ダメだ。まだ眠い……昨日修行を頑張りすぎた。やっぱり午前〇時でやめておけばよかった。午前一時はやりすぎだった)
土曜日割の良いバイトをした事でテンションが上がったのを良い事に、日曜日は『私は男運が良い』をたくさん書き男運を上げようとした。しかし張り切りすぎたようで、寝たのに疲れが取れない。二度寝したかった。
(朝ご飯を食べなければ、七時半まで寝ていられる。メイクも適当にするなら、八時まで寝ていられる。ああ、どうしよう……)
「ダメに決まっているだろう」
「…………!」
突然聞きなれた声がし、室内を見まわした。すると、風呂場から真っ赤な特攻服を来たロマンスが現れた。
「ロマンス!な、なんで風呂場から出て来たんですか?もしかして、風呂場の上に住んでいます?」