「わ、私の後を着いて来たんですか?だったら声くらいかけて下さいよ」
「いや、着いて行ってない。今さっき、玄関で合ったばかりだ」
「玄関?じゃあ暗闇の中に立っていたのはロマンスだったんですか?」
「そうだ」
「でも、ドアが開いた音は聞こえませんでしたよ。どうやって出て来たんですか?」
「瞬間移動だ」
「瞬間移動!できるんですか?」
「朝飯前だ。アタイは神様だからな。知佳が寝っぺこくくらい簡単な事だ」
「寝っぺなんてしません!」
「じゃあ、あれか。シッペするくらい簡単な事だ」
「『ぺ』で韻を踏まないでください!」
すると突然、ロマンスは私の顔を指差した。
「な、何ですか?」
「ところで知佳。お前の驚き方はひどすぎる」
「はっ?」
「なんだ、さっきの驚き方は。『ヒッ』って。オヤジか!もっとかわいく驚けないのか。『キャーッ』とか『いやだぁー』とか」
「本当に怖かったから、しょうがないじゃないですか。『キャーッ』なんて、乙女チックに叫んでいる余裕ありませんよ」
「ガサツゥ~」
「ブリッ子して言わないでください!ロマンスだって、驚いたら『ヒッ』くらい言うでしょ」
「アタイは言わねぇよ]
「じゃあ、どうするんですか?」
「おどした奴をブン殴る」
ロマンスの目が、キラリンと輝いた。
(マジ、怖い……)
「関心している場合じゃない。さっそく修行の続きするぞ」
「エーッ!今、バイトから帰ってきたばかりですよ。お風呂入らせてください。何か飲ませてください。食べさせてください。休ませてください!」
「何ふ抜けた事を言っておる。そんなんじゃ、いつまでたってもモテ子になれんぞ」
「でも、すっごい汗かいたから、体ベタベタして気持ち悪いんです。こんなんじゃ、集中できないし、男にも嫌われます」
「ムム……」