「怖いわねぇ」
お母さんは眉間にシワを寄せた。
「はい、怖かったです。だから、目が合ったら大急ぎで逃げたんです。裕矢さんのいる図書館へ行こうと思って」
私は今日起きた事をみんなに話した。お父さんとお母さんに付き合う事は話したが、午前中に起きた事件についてはまだ話していなかった。翔太が来てから話した方が手間が省けていいと思ったのだ。
 全てを放し終えると、お父さんとお母さんは困惑した表情で顔を見合わせた。
「裕矢、腕は大丈夫なのか?」
「五針縫ったけど、大丈夫だよ。傷口は横に広く切られたけど浅かったから。知佳ちゃんも特にケガはしてない」
「それはよかった。ところで翔太。鉄平君は命に別状はないのか?」
「えっと。いや、内臓が少し傷ついたから、入院は長くなりそうだって」
「刃渡り十センチ以上はあったもんな」
「あの……刺した女の子って、どんな人かわかります?」
「うん。元交際相手だって。ただ、最近の鉄平は十五、六人の女の子と付き合っていたみたいで、まだデートは三回しかしていなかったんだって」
「十五、六人!病気だな」
裕矢はビックリして言った。私は聞くのは二回目だが、やはり驚いた。
「そうだと思う。でも、さすがに天罰が下ったんだろうね。今回刺した子は、前付き合っていた彼氏の事もストーキングして大騒ぎしたんだって。鉄平は落とすのに夢中でそういう情報まで気が回らなかったみたいだね」
「だろうな。ストーキングするような人間だって知っていれば、自分の女にしようなんて思わないもんな」
「実はその子、ほかにも鉄平にダメージを与えたみたいなんだ」
「何したんだ?」
「鉄平の悪事を実名でネットのあちこちに書き込みしたらしくてさ。それを見た、他に付き合ている女の子達も大激怒しているらしい。書き込みした場所が大炎上したのはもちろん、病院に押し寄せて来たらしいよ」
「怖ーい!悪い事はできないなぁ」
「ああ。さすがに偉いお父様もお手上げらしい」
「俺は一人の女性を心から愛して生きていくよ」
裕矢は私に向けてウインクした。私はウフッと笑った。