「医者として命を救うのは当然だ。気に病む事はない」
「ありがとう」
「それで、エリカちゃんとは今後どうするんだ?」
裕矢は身を乗り出して聞いた。翔太は『フーッ』と大きく息を吐いた。
「ひとまず、やり直すよ。今日エリカを見てくれた先生は、一度エリカが元気になって本人が別れる事を受け入れるまで待たないと、何度でも自殺をするって言うんだ」
「でも、そんな偽善者みたいな気持ちで付き合っていたら、かえってエリカちゃんが傷つかないか?女の人って感が鋭いから、本気で好きじゃない事に気づく可能性は高いぞ」
「今日の朝エリカがさ、『悪いところがあったら直す』って言っていたから、それにかけてみようと思うんだ。もし直らないようだったら、その時もっと違う方法で別れ話をするさ」
「俺は止めた方がいいと思うけどな」
「裕矢、翔太はそれでいいと言っているんだから、翔太のやりたいようにさせよう」
「わかったよ、父さん」
「ただ、言ったからには責任を取るんだ、いいな」
「うん」
「できるだけエリカちゃんを泣かすな」
「わかった」
翔太がうなずいて間もなく、翔太の携帯電話がメールを受信した。話が一段落したのでメールを見れば、翔太はびっくりして私達を見た。
「鉄平が横腹を刺されて入院したって!」
「ああ、知っている」
「知っている?何で?」
裕矢は長袖のワイシャツの左袖をめくって、包帯を巻いた腕を見せた。
「どうしたんだい、その包帯?」
「鉄平に切られたんだ」
「鉄平に?いつ?」
「今日の午前十時半くらいかな。知佳ちゃんとよりを戻すために、鉄平はうちの大学まで押しかけてきたんだ」
「えっ?」
「どうやって調べたのか知らないけど、知佳ちゃんが二講目に講義を受ける教室を知らべて、そこで待っていたんだ。そして知佳ちゃんが来たら、校外へ連れ出そうとした」