「もちろんだよ!ただ、あまりにもひどかったらカツを入れるよ」
「はい」
裕矢は私の左頬を包み込むように触れた。
「知佳ちゃん、好きだ」
私がうなずけば、裕矢の顔が近づいてきた。目を閉じると今度は避ける事なく待った。
 フワリ、と彼の唇が触れた。恋心が通って初めてのキスは、真面目で誠実な彼の人柄を感じさせてくれる紳士的な物だった。今までの女の扱いになれた男達のキスとは違っていた。
 私の新たな恋の幕は、静かに開いた。