教えて!恋愛の女神様

「おお、浮世絵だ!シブいね」
「そうなんです。シブ過ぎて、私には理解できなかった。ロクに見もしないで帰ってきちゃった。今思うと、北斎さんに申し訳ない」
「まあ、わからないでもないかな。女子高生が理解するにはちょっと早そうだよね」
裕矢はクスッと笑った。そして入り口から五番目の絵の前で立ち止まった。
「今回は西洋絵画だけど、どう?」
「油絵は好きなので楽しいです。特にゴッホの『ひまわり』は、見るのが楽しみです」
「それはよかった。実は俺もゴッホは楽しみにしていたんだ」
私たちはニッコリと微笑み合うと、次々絵を見ながら前へ進んだ。。
 七、八枚ほど見たころ、その絵は突然姿を現した。
「あれもしかして……ゴッホの『ひまわり』?」
遠くからでもわかる、目にもまぶしい大輪のヒマワリが、二つのライトに照らされ輝いていた。その絵は大きく、とても存在感があり、周りにかけられている絵がかすんでいるように見えた。
 私と裕矢は順路通りに行けばまだ何枚も見る絵があったのに、チラリとも見ず吸い込まれるようヒマワリへ近寄った。
 絵の前に立つと、私達は息を飲み見つめた。
「何度も教科書で見たことがあるけど、実物は初めて見た」
「俺もそうだよ。図書館にある美術の本で何度も見たけど、本物を見るのは今回が初めて」
ハア、とどちらからともなくため息がもれた。
「すごく素敵!タッチが力強くて、あふれるような生命力が伝わってくる」
「そうだね、本当にそう思う」
「私、この絵が好き!」
「俺も好き!」
私達は目を合わせると、アハハ!と笑った。
「同じ事考えていましたね」
「ああ、俺達気が合うね」
裕矢は再び絵を見た。追いかけるよう、私も見た。
「この絵を見ていると、なんだか今が夏のような気がします」
「そうだね、りっぱなヒマワリだものね」
「でもゴッホは、生きている間にたった一枚しか絵が売れなかったんですよね?」
「おお、詳しいね」