「よっぽど魅力的だったんだね。無口になって考えちゃうなんて」
「魅力的か……そう、魅力的ですね」
私は助手席の窓から外を眺めた。裕矢の言っている事は確かに図星で、しかしなかなか決別できない自分がもどかしかった。
「シウの曲聞く?」
「あっ、は、はい!」
まるで私の気持ちを察したかのように裕矢はオーディオをいじり、シウの曲をかけてくれた。
枯葉がまう並木道に似合う、スローでメロウな曲が始まった。切なくて、でも力強く前へ進みたいと思う女の子の気持ちを現す歌詞をシウが情感たっぷりに歌い上げる。シンガーソングライターとして活躍する彼女の歌唱力は抜群で、私も裕矢も一言もしゃべらず聞き惚れた。
それから美術館まで約一時間の道のりは、ずっとシウの曲を聴き続けた。裕矢は新曲の他に、シングルで五曲、アルバム一枚をマイパッドに入れていて、私が聞きたいという曲を聞かせてくれた。ときおり彼女について話した。
それはとても安らかでホッとする時間だった。このままずっと浸っていたいと思った。
美術館のそばにある駐車場に車を停めると、二人並んで歩いた。
「五分くらいで着くから」
「はい」
予定通り五分で着くと、チケットを買って中に入ろうとした。
「チケット代、俺が払うよ」
「そんな、自分で払います」
「デート代は男が払うものだよ」
「そう、ですか?……じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「うん、そうして」
裕矢はうなづくと軽やかな足取りでチケットを買いに行った。彼の背中を、私は嬉しいような申し訳ないような気持ちで見ていた。
チケットを受け取り館内へ入ると、まばらに人がいた。午後六時三十分を過ぎていることもあり、カップルや友達だけでなく、会社帰りと思われるスーツ姿の人もいた。どの人もゆったりとした足取りで絵を眺めていた。
「わあ……美術館に来るの、すごく久しぶり。高校の美術の授業で来た以来だ」
「今回は西洋絵画だけど、高校の時は何を見に来たの?」
「葛飾北斎です」
「魅力的か……そう、魅力的ですね」
私は助手席の窓から外を眺めた。裕矢の言っている事は確かに図星で、しかしなかなか決別できない自分がもどかしかった。
「シウの曲聞く?」
「あっ、は、はい!」
まるで私の気持ちを察したかのように裕矢はオーディオをいじり、シウの曲をかけてくれた。
枯葉がまう並木道に似合う、スローでメロウな曲が始まった。切なくて、でも力強く前へ進みたいと思う女の子の気持ちを現す歌詞をシウが情感たっぷりに歌い上げる。シンガーソングライターとして活躍する彼女の歌唱力は抜群で、私も裕矢も一言もしゃべらず聞き惚れた。
それから美術館まで約一時間の道のりは、ずっとシウの曲を聴き続けた。裕矢は新曲の他に、シングルで五曲、アルバム一枚をマイパッドに入れていて、私が聞きたいという曲を聞かせてくれた。ときおり彼女について話した。
それはとても安らかでホッとする時間だった。このままずっと浸っていたいと思った。
美術館のそばにある駐車場に車を停めると、二人並んで歩いた。
「五分くらいで着くから」
「はい」
予定通り五分で着くと、チケットを買って中に入ろうとした。
「チケット代、俺が払うよ」
「そんな、自分で払います」
「デート代は男が払うものだよ」
「そう、ですか?……じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「うん、そうして」
裕矢はうなづくと軽やかな足取りでチケットを買いに行った。彼の背中を、私は嬉しいような申し訳ないような気持ちで見ていた。
チケットを受け取り館内へ入ると、まばらに人がいた。午後六時三十分を過ぎていることもあり、カップルや友達だけでなく、会社帰りと思われるスーツ姿の人もいた。どの人もゆったりとした足取りで絵を眺めていた。
「わあ……美術館に来るの、すごく久しぶり。高校の美術の授業で来た以来だ」
「今回は西洋絵画だけど、高校の時は何を見に来たの?」
「葛飾北斎です」

