すっかり夢見心地だった。もう翔太と付き合っているよな気がした。裕矢にメールの返信を返す事は、すっかり忘れていた。
 人生で一番早いスピードでご飯を作り食べ終えると、洋服ダンスやクローゼットからありったけの服を出し、持っている知識を総動員してコーディネートを考えた。
(どれがいいかなぁ。この服すごく気に入っているけど、胸元が空きすぎて学校に向かない。このワンピースは着すぎてくたびれている。こっちは生地が薄いし、こっちは厚すぎる。……そうか、今までは月に一度デート用の服を買いに行っていたけど、今月はまだ行っていない。毎日、学校と修行、バイトに明け暮れていたんだ)
軽くショックを受け、ボーッとした。今まで私が蓄えていた知識では、オシャレじゃない女は男に相手にされない、そう思っていた。親友だったアミ、ユカ、マアコもそう言っていた。『ブスな女もモテないけど、ダサい女はもっとモテない』って。
(どうしよう……このままじゃ、翔太君に好きになってもらえないかもしれない)
頭の中をよぎる翔太の彼女、矢井田エリカ。彼女は顔もスタイルもいいが、ファッションセンスも抜群に良かった。だから翔太のような素敵な男の子に好きだと思ってもらえたに違いない。
(やっぱりモテ女になれないのかなぁ……)
「あいかわらず、ショボい事で悩んでいるなぁ」
「…………!」
声をした方を見れば、真っ赤な特攻服を着たロマンスが立っていた。仁王立ちして組んだ服の上には、今日もたわわな胸が乗っていた。
「ふんっ!恋愛の神様にモテない女の気持ちなんかわからないでしょ!」
「よほど悩んでいるようだのう。しかし、八つ当たりしたところで状況は一つもよくならないぞ」
「冷やかしにきたのなら、かえってください。今やれることをやらないと、ダサい女ながらも恋のチャンスが逃げちゃうから」
「良い事を言うじゃないか。なんだかんだ言って、修行の成果は出ているようだの」
「そうですよ、がんばってますもん」