翔太の優しい言葉に胸がジン、とした。思わず彼にすがりついてしまった。
 返信メールに、昨日の夜、鉄平が押しかけてきて怖かった事や追い返すのに苦労した事などを書いた。彼に『大変だったね』と慰めて欲しくて。
 すると、メールを送ってすぐ電話がかかってきた。翔太からだった。
「おはよう」
『おはよう。こんな朝早くから電話してごめんね』
「ううん、大丈夫」
『鉄平にひどい事されていない?』
「うん。メールに書いた通り、警察を呼んだら何とか帰ってくれたから。問題ないよ」
『ちゃんと眠れた?』
「あんまり。忘れようとしてもどうしても思い出してしまって、怖くて眠れなかった」
『今日、講義はあるの?』
「もちろん。短大は四年制と違って卒業まで時間がないから、けっこう講義が入っているんだ」
『一人で行ける?』
「それって、もしかして送ってくれるって事?」
『だって、昨日の夜そんな事があったんじゃ心配だろ?俺は今日は講義が二講目からで時間があるから、送って行けるよ。どうする?』
「わあ、本当!いいの?」
嬉しくて踊りたくなった。しかし翔太の彼女の顔が浮かんだ。彼女は私と同じ大学の経済学部に通っている。遭遇する確率は非常に高い。
(気の強そうな人だったけど、翔太君とは『今すぐ別れてもいい』みたいな事を言っていた。だから、一緒にいても変にジェラシー燃やされたりしないよね)
「じゃ、お願いしようかな」
『それじゃあ、大学の正門前にあるバス停に七時五十一分に着く便で行くから。バス停に着いたら電話するね。その時、家の場所を教えてくれる?』
「いいよ」
『ありがとう。また後で』
「うん、また後で」
通話を切ると、キャッ!と小さく叫んで飛び上がった。
(翔太君と登校できるなんて、夢みたい!ああ、修行の成果が出てきたかな?)