「急に成長するからビックリしたんだよ」
「急に成長?やった!」
「私と出会った頃の知佳はひどかったからな。自分の事は全部棚に上げて、男に外見、学歴の良さを求める。当然、考え方は後ろ向きで、依存的。交友関係を持つ友達もヒドイのばかり。だから動けば動くほど、深みにハマっていった」
「そうでしたね……」
「あの時を思うと、今は大人になったもんだ。もう少しで間違いなくモテ子の仲間入りだ」
「モテ子の仲間入り?本当に?」
「本当だ」
「やった!彼氏ができるぞ!」
「ま、これもアタイのおかげだな」
「…………え?」
「アタイが手取り足取りモテ子になるための特訓をしたからだ。そうでなきゃ、今もまだ地獄の三丁目をウロウロしていたはず。変な男ばかりつかまえて、泣き暮らしていたはずだ」
「あの、お言葉ですが、私も頑張ったからだと思いませんか?」
「もちろん、知佳も頑張った。しかしアタイの修行あってこそだ!」
ロマンスはウンウンとうなずくと、残りのアイスを一口食べた。たわわな胸をブルブル震わせて。
(けっきょく、自分の事を自慢したいだけだな)
私はあきれて見ていた。
 とたん、携帯電話がメールを受信した。時計を見れば、午後十一時。
(こんな時間に誰だろう?裕矢さん?灯ちゃん?……それとも、翔太君?)
『翔太』の顔が頭の中に浮かび、ニンマリする。今日、元カレの鉄平の事で何かあったら困るからと携帯電話の番号とメールアドレスを教えてくれた。もしかしたら、初メールをくれたのかもしれない。
(私もまだ初メール送っていないな。いざと言う時のためにも送っておかなきゃ!)
ルンルンして携帯電話を手に取った。その様子をロマンスはなぜか厳しい表情で見ていた。
「…………!」
メールの受信トレイを開けたとたん、ショックのあまり全身が凍りついた。心臓の鼓動が止まっていないのが不思議だった。
-メールの送り主は、鉄平だった。タイトルは『お久しぶり』-