私は翔太から目をそらし、灯のいない方を見た。鉄平の事を話せば話すほど心が苦しくなっていく。できるなら、もう話したくなかった。
 押し黙った私を見て考えを察したのか、翔太はそれ以上聞いてこなかった。
「ありがとう、知佳ちゃん。じゃ、今度は俺から話すね」
「うん」
「ちょっと嫌な事を言うけど、ごめんね。これ以上君に傷ついて欲しくないから、あえて言うんだ」
「うん」
「確認だけど、鉄平とはもう別れたの?」
「その……フラれたんだ」
「やっぱり」
「やっぱり?知っていたの?」
「知っていたと言うより、予感があたったって感じかな。鉄平は高校時代からの友達だって言ったろ?色々詳しいのさ」
「そうなんだ……」
とたん、翔太は真剣な顔になった。私はドキッとした。
「鉄平は友達として付き合うにはすごく良い奴なんだ。優しいし、気遣いもできるし。約束した事も絶対破らないしね」
「へえ、そうなんだ」
「ただ、相手が女の子となると話は違う。あの通りルックスは良いし、勉強もできる。父親は中小企業ながら社長。事業がうまくいっているからお金もあって、けっこうな額の小遣いをもらっているんだ。そんなわけで、さほど頑張らなくても女の子の方から寄ってきていた」
ズキッ、私の心はかなり痛んだ。
(私も、フラフラ簡単に寄って行った)
「鉄平って、中学時代からそこそこモテていたみたいなんだけど、高校に入ってから格段にモテるようになったんだ。そしてそれは今も続いていて、すごい数の女の子と付き合っている」
「すごい数?ど、どれくらい?」
傷つくのはわかっているのに、私は思わず聞いてしまった。
「その……」
「うん」
「……十五人」
「十五人!信じられない!」
灯は声を裏返して叫んだ。そんなひどい男は、ドラマか漫画の中にしかいないと思っていたのだ。