(アミに反論したら、仲間外れにされそう……)
強気で自分の意見に自信のある彼女達は、反対勢力を許さない。特に殺気立っている時は相手を思いやる余裕はみじんもなく、『NO』と言えば高い確率で絶交されそうだった。
(どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう!絶交されるのはイヤだけど、黙っていたらアミ達は裕矢さんをボロクソに言い捨てる。ロマンスの言いつけを守れなくなる……モテ子になれなくなる!)
太ももの上で握った拳にギュッと力を入れた。どちらか選ばなければならないのに、どちらも選べない自分がいた。
 さらに、ロマンスに言われた言葉を思い出した。それは、初めて会った夜に言われた事。
『己が変わるたび、取り囲む状況はどんどん変わって行く。素敵になる分、悪かった部分とはお別れしなければならない。それは、今とても大切にしている物を捨てる事でもある』。
目の前にいるアミ達が『大切な物』に思えた。
 そしてもう一つロマンスに言われた言葉を思い出した。
『一つの痛みと引き換えに、お主は素敵なモノを手に入れる。それはアタイが保障しよう』
(一つの痛み……お別れしなければ、ならない……)
ズキズキ痛む胸を抑えようと、服をギュッとつかんだ。
(『自分を変える事は勇気がいる』って事もロマンスは言っていた。でも、怖いよ。勇気が出ないよ……)
私は逃げ出したくなった。
 すると突然、裕矢は椅子から立ち上がった。私、灯、やす子、ミサオはぎょっとして彼を見た。アミ達は『かかってきな』と挑発的な目で見ていた。しかし裕矢はひるむことなく、アミ達を真正面から見すえた。
「浪人したり留年したりすることは、そんなにダメな事なのか?」
「あたり前じゃない。ちゃんと勉強したり学校通っていれば、けっして浪人したり留年したりしないでしょ?したって事は、努力していなかった、つまりサボっていたって事」