裕矢は切なそうな顔で私を見た。
「俺をもっと頼ってもいいよ。たしかに非力だけど、全力を出すから。君の力になりたんだ。いつでもそう思っている」
「裕矢さん…」
「君が幸せでいられるよう一生懸命努力する。だから、できるだけ俺を見て。翔太の事を見ないで」
「…………」
私は目をそらした。裕矢の熱い思いが伝わってくるのに、応えられないのが心苦しかった。
「ごめん。知佳ちゃんの気持ちも考えず思いをぶつけてしまったね」
「いっ、いえ。そんなことないです。気にかけてくれて嬉しいです」
「本当?」
「はい」
「だったら、俺待つよ。知佳ちゃんの気持ちが俺に向くまで」
「そんな、待つだなんて……」
「俺は本気で知佳ちゃんが好きなんだ。君と付き合う事以外、考えられない。だから君が俺を見てくれるまで、ずっと待つよ」
「いつになるか、わかりませんよ」
「五年でも、十年でも待つよ」
キッパリ言い切った裕矢はりりしかった。あまりにもりりしかったので、『付き合ってもいいかも』と思ってしまった。
(いけない!私が好きなのは翔太君。裕矢さんじゃない。しっかりしなきゃ!)
男運最悪の上片思いの人がいる私は、素直に『はい』と言えなかった。


 彼は突然言った。
「俺達、終わりにしよう」
苦しんでいる様子はない。まるで『コーヒー飲む?』って聞いたら、『今はいい』と断るような軽い口調だ。
「な、何で?」
しかし私はすごいショックを受けた。自分のどこが悪いのか、さっぱりわからない。
(だって、これまでの『恋愛経験をいかして』最大限の努力をした。フラれるわけがない!)
「……つか、好きじゃねぇし」
「えっ?」
「カマかけたら軽く落ちたから、セフレに良いと思って連絡取っただけで、気持ちとかマジないんだよね」
「そ、そんな……だって『愛している、知佳は最高だ!』って、え、エッチした後言ったじゃない!」