チラ はぁ…
チラ はぁ……
チラ

「ちょっと、いい加減うざいから。」

七海があたしの頭を叩く。

「痛っ。
…何が?何の話?」

「早紀、それ無意識にやってたわけ?」

――――無意識?

「名刺見て、はぁ。
名刺見て、はぁ。

もう、なんなのよ。」

ふん、と怒る七海。

あたし、そんな女々しいことしてたの?
我ながら気持ち悪。

「ごめんごめん。」

「もう、気にしてるの見え見え。
そりゃ食事なんて
いきなりだとは思うけどさぁ。」

「気にしてるっていうか…」

そう、今日は土曜日。
岡田さんとの食事の約束がある日。

電話では、全然気にしてなかったけど、
いざ当日になると、もう心臓バックバク。

親バカなパパのおかげか、
許嫁だのお見合いだの、
そんなたいそうな経験は皆無。

いわゆる、ハジメテ。


「あー、うー…」

ダメだ、頭が回転しない。

「キモいから。
ちゃんと、ロンパース着てきなさいよ?」

「分かってるよー」

はぁ、どうしたものか…


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