『私も秒殺でその瞳に吸い込まれ、身動きが取れなくなりそうでした…』


『おそらくその婦警さんは、25才前後の女性で、当時高校生の私から見ると、へたするとおばさんと思える位、年齢では隔たりがありました…』

『しかし、そんな常識的な年齢差などないに等しかった…』

『そんなものはとっくに超越したレベルでの出会いでした…』

『もう10秒以上、いやその秒数以上の感覚で、まだお互いが見つめ合ったままになっていました…』

『私はゆっくりとした足取りで歩きながら、そして婦警さんは、その幹線道路の両脇に植えられたポプラの木のように、立ち尽くしていました…』

『私は3歩、歩いた時に恋に落ち、10歩目には愛に変わっていました…』


『これこそが俗に言う一目惚れだと、瞬時に思いました… しかし私は頭の片隅で、お互いが一目惚れを成立させた場合は、何て言う言葉で表現すれば良いのだろうかと考えていました…』

『…しかし、当時の私にはその情況の最中(さなか)、ピッタリな言葉が見つかりませんでした…』



『スローモーションで流れるその時を、二人は永遠に止めてしまいたいと思っていた事でしょう!』



『しかし、二人はわかっていました…この歩道橋を渡りきるまでの恋愛である事を…』



『私は、足の痛み以上に歩く速度を落としましたが、早くも半分を渡り…



私は彼女に視線を絡めたまま、…それでもゆっくりと歩き続けました…』


『何故かその場に立ち止まったり、引き戻って彼女に話かけるのは、ルール違反のように思えました…』

『それは婦警さんが職務中だとか、そういう狭い範疇の次元ではなく、何故か一瞬でそのルールを理解してしまいました!』


『私はそれをする事は、とても男性として浅ましい行為のように思えたし、それをする事で彼女に嫌われるのも、怖かったのかもしれません…そして彼女も…』


『それが二人だけの唯一の約束事のように…』


『そしてそれが二人だけの恋愛の交換条件でした…』