どきどきどき。 傘はなくて もうお互いの距離を阻むものなんて何処にもないのに。 市ノ瀬君のその悲しそうな顔が あたしを近づけなくさせる。 一人分空いた距離。 流れる景色に目を移すと そこに広がるのは先ほどとは違う景色。 ビルや、賑やかな町はそこにはもうなかった。 どれくらい、乗っていたんだろう。 「降りよう、如月さん」 市ノ瀬君の声を久しぶりに感じながら 電車を降りた。