隷従執事の言いなり



『…どうしました?椿様』

「…昔の事思い出していただけ」

あの日より前の碧に会いたい。
少なくとも今より、近かった気がするの。
心の距離が。


こんな事思ってるのはきっと私だけ。


『お嬢様、服脱いで下さい』


碧は執事だから、こんな事がさらりと言えるの。
私の高級ドレスについた染みをとらなければいけないから。

でも私は違うの。
そんな風に割り切れないの。


「い、嫌よ……!」

『何故です。そのドレスは確かお嬢様の大のお気に入り…と記憶しておりますが』


そうよ。
このドレスは、私のお気に入り。

その理由も、碧は覚えてなんかいないだろうけど。


でもね、このドレスを着た時、初めて碧に『可愛いですね』って言われたからなんだよ?

私のお気に入りの理由。

きっと、その言葉だって、執事と言う立場から言った言葉。
只の、業務的な誉め言葉。


そんな事分かってるけど。


どうしてもその言葉が頭から離れなくて。
あの時の碧の声が耳から離れなくて。


たった一言で、私の大切な物を一つ増やしたんだ。


「でも…脱いだら…、下着だけになっちゃうじゃない…!」


碧は、私のそんな姿見ても何とも思わないの?