泣き出しそうになりながら、やっと声を絞り出す。
「誘うって何…?分かんないから教えてよぉ…」
分からないものをやってみろと言われたってできるわけない。
私が泣きそうになりながらそういうと、碧は体を少し離して見せた。
そして、口角をニヤリとカーブさせた。
『…しょうがねぇから教えてやるよ』
その笑顔は、見た事のないくらい妖艶で。
忠実の証である燕尾服にはそぐわないそのギャップが、それをさらに際立たせる。
初めて見る碧の顔。
それは、何故か私の胸を熱くさせた。
ドキンと突かれた心臓は、一度鳴り出したら止まら無い。
「教えて、下さい…」
自然と敬語になってしまい、いつもと立場は逆転する。
怖いのに、不安なのに知りたい。
葵のあの笑みが、私の好奇心を駆り立てる。
私は知りたくてたまらなくなってしまったのに。
『やっぱ止めた』
「え…?」
急に私から完全に離れた碧は、私のベットに腰掛けた。
碧の行動が全く分からない。
誘えといったり、教えると言ったり、かと思えばやっぱり嫌だと言い出す。
「なんでよー…!」
私は碧に近づいてぷぅと頬をふくらます。
「あーおーいー」
碧の服を掴んで揺らす。
「ねーえー教えるっていったの碧でしょ!」
碧は何も言わずに沈黙を守る。
「聞いてるの?碧ーー」
『…だからそういうとこだって言ってんだよ』



