『落ち着いたみたいだね』
「はいっ、ありがとうございました」
しばらく気持ちを落ち着かせて、拓真さんから離れた。
「わっ…」
途端、誰かに腕を引かれて、危うくこけそうになりながら振り向くと、
『そろそろ御帰りの時間です』
「碧…っ?」
手を引いたのは紛れもなく碧で。
まさか、今の見て…!?
『旦那様が心配なさいます』
「えっあの、た、拓真さんありがとうございましたっ…!」
取り敢えず離れて行く拓真さんに再度お礼を言って、後は碧に引かれるまま車に乗り込んだ。
「あ…おい?いつからあそこにいたの?」
抱きしめられていたのを見られたのは確実だか、それより最悪のケースが存在する。
碧の返答によって、それが決まる。
『ほんの五秒程前かと』
…良かった。
それならあの会話は聞かれていないはず。
それにしても、碧の機嫌が悪い。
いつもニコニコしてない、そもそもここ最近では笑顔の記憶さえ危うい碧だけど、長年の付き合いのせいで、どことなく分かってしまう。
私の機嫌が悪くなるなら分かるものの、碧が悪くなる意味が分からない。
それにさっきの碧、拓真さんを心なしか睨んでいた気が…。
碧の考えてることはやっぱりよく分からない。



