隷従執事の言いなり



『落ち着くまでこうしてようか』

「なっ…!拓真さんっ?」

突然まわされた腕。
それは私を包むように、体にまわされていて。

余りの密着度に、あたふたと慌てるばかり。

「勘違いされます…!」

幸い人通りの殆どない廊下だが、かといって絶対に誰も通らないという保証は無く、もし誰かが見たもんなら、勘違いしても仕方が無い体制だ。

『僕は女泣かせだ、なんて勘違いされるほうが困るよ』

そうか。
これは拓真さんなりの気遣いなんだ。
体格差のせいで、私の顔は拓真さんの胸に埋れて周りからは見えないし、この悲惨な泣き顔を見られる心配はない。

『それに皆僕と君なら誰も不思議には思わないよ』

「どういう意味…っ」

『気にしないで。それより君は早くその顔をなんとかするように』

「なっ…!わ、分かりましたよっ」


話を遮られて、うやむやになってしまった疑問は、晴れることは無く。
私は言われた通り、顔をどうにかすることに必死になってしまった。