頭では分かっているのに｡
心が嫌だと泣き叫ぶ｡
「……私､ちょっと…喉乾いちゃった…！」
適当に理由をつけて､この場から早く逃げ去りたかった｡
そうしないと､もう涙を耐えられそうになくて｡
その場を飛び出した｡
隠しきれない想いが溢れる前に｡
「……うっ…ひっく…」
我慢していた涙は､２人から離れてようやく解放されて｡
堰を切ったように流れだす｡
分かって､いた｡
私の望みは叶わないんだって事くらい｡
碧は執事に徹底していて｡
私をそういった目で見た事も考えた事もないって事くらい｡
分かっていたのに｡
なんで､涙が出るのだろう｡
「碧の……馬鹿ぁ…！ひっく」
『椿さん』
追い掛けてきてくれたのは､
「拓…真さ……ん」
碧ではなく､拓真さんだった｡
