「絶対に、絶対に、有り得ないのね」
『はい、誓って……………っお嬢様…!』
想う事くらい、許して欲しかった。
憧れるくらい、許して欲しかった。
『あのね、椿さん……これは…』
例えば私が、傷ついたとして。
嘘でもいいから、業務でもいいから、抱き締めて欲しかった。
そう、思っていたのに。
いつからこんなに欲張りになったのだろう。
「…はぁ、全く碧ってば、なんて顔してるの」
碧が私を好きにならない事くらい、分かり切っていた事じゃない。
『お嬢様…』
私達二人をこの関係にしたのは私自身なのに。
「執事が主人に恋、だなんて、とんでもない事じゃないっ」
碧を執事にしたくせに、その関係を不満に思うなんて。
お嬢様の我儘炸裂も良いとこ。
「私が傷つくとでも思ったの?」
碧にとって私はとうの昔から、お嬢様以外の何者でもないのに。
分かって、いるのに。
「馬鹿ね…。だって私達は」
なのに、
「只の執事と主でしょ?………そんな関係、…なるわけないじゃない」
どうしてこんなに苦しいのだろう。



