「べ…ベッタリなんてしてません…!」
少し、聞き捨てならなかったのだ。
『してたしてた。転んだ時だって「あおい〜」躓いた時だって「あおい〜」滑った時だって「あおい〜」ってさ』
「なっ!!言ってませんたら!それにそんなにこけてばかりいませんよ…!」
記憶を辿るように上を見上げて、指折り例を挙げていく拓真さん。
『因みに珍しい虫見つけた時だって「みてみてあおい〜」って言ってたっけ。それでアイツに向かって駈けていった君は、目的を達成する前に転倒。それでまた「あお「もう止めて下さいー…!」
辱めに耐えられなくなった私は、これ以上拓真さんの口から真実が漏れないように、口を塞ごうとする。
しかし、体格差のある男性には適わず、両手首を掴まれて敢えなく失敗。
『君は本当にからかいがいがあるよ』
「そんなの嬉しくありません…!」
こんな風にじゃれついていると、背後に気配を感じた。
それに影がかかって、暗い。
『椿様』
耳についたのは、鼓膜を震わす甘い声。



