『あら椿さん、先程とドレスが変わられて…。素敵ですわね』
ワインの一件を知らない人達は、只の衣装チェンジだと思ってる様子。
それにしても、誰も彼もが、このドレスを綺麗だ素敵だ、などと褒める。
まさかこれの正体が、シーツだと思う人はいないだろう。
流石碧、だ。
なんでもさらりとこなして。
どうしようもなくて困った顔なんて見た記憶は無い。
私の我が儘も何のその。
只構ってほしいだけの私には、こんなに不都合な事は無い。
少しくらい、感情的になってくれたら良いのに。
それにしても、
碧がいないだけでこんなに不安になるなんて。
斜め後ろの絶対的な安心感。
それが無い今、私の心は細く臆病で。
何かやらかしても助けてくれる人がいない。
さっきみたいにアクシデントか起こるかもしれない。
そう思ってしまい、迂濶に行動できなくて。
私は隅っこの方で大人しくジュースを飲んでいた。



