『お嬢様』
後ろから碧が私を呼んだ。
でも私は蹲って背を向けたままで。
まるで子供が拗ねた時のように、碧を無視する。
『さ、これを着てパーティーに戻って下さい』
「………」
これを着てって…。
私の着る物は無くなってしまった筈じゃ…。
私は碧が言った“これ”が気になってしまい、そっと碧の方を向いた。
「何…それ」
碧が持っていたのは、白いドレスで、胸元を大きな生花が飾っている。
シンプルだか、すごく可愛い。
でもなんで、そんな物がここに…。
その疑問は、碧のまわりを見た瞬間に直ぐに分かった。
…というのも、
碧の足下には、裁縫道具や、白い布の切れ端、花びらをなくした茎だけが挿さっている花瓶…。
「まさか…つくったの…」
『蕪木家の令嬢の専属執事たるもの、これくらいは出来なければクビになってしまいます』
信じられない。
私より女らしいじゃない。
ううん、違う。
女とか、男とかじゃないんだ。
碧は碧。
決して、君は君なんだから、とか言った良い意味じゃなくて。
碧は執事。
それ以外の要素を、見ちゃ駄目なんだ。
「ありがとう、碧」
だからさっきの事は、寧ろ碧に感謝しなくちゃいけないんだ。
だって碧は分からせてくれただけ。
碧は、何も間違ってないんだから。



