『お嬢様、此処で落とせるのは限度があります。…どちらにせよ着るものに困りましたね…』
暫くもくもくと染み落としをしていた碧が、珍しく困ったように口元に手を寄せた。
今碧の頭の中では、あらゆる対策方法がめぐりめぐっているに違いない。
考えてる様子も、絵になる。
窓から流れ着いた月光が、碧の燕尾服を照らして、顔にかかったの影が映える。
碧には黒がよく似合う。
漆黒の髪は、思わず手を伸ばして触れたいと願う程。
私も月光のように、彼の黒を映えさせられればいいのに。
…そんなおこがましい事、到底口には出せないけど。
『…………様、聞いてます?』
「へ?ごめん…っ!もう一度言って?」
思わず見とれてたなんて、恥ずかしい…!
碧は私の身に纏ったものを手で示して、口を開いた。
『…そのシーツ、貸していただけますか?』
まさか…、聞き間違いだよね。



