「………ねぇ。君?…君だよね、私を呼んだのは…?」
ひたすら俺のことを呼び続けているアリス。
しかし、後ろを振り向いて、「ああ、俺が呼んだんだぜ☆」…なんて言える勇気もない。
俺は、どうしたらいいんだ…。
…いや、どうしたらも何も、方法は一つしかないだろう。
勇気を振り絞って、俺は後ろを振り向かなければならない。
死神アリスはきっと、この世界に存在していたのだ。
俺がここに来た目的はただ一つ。
死神アリスの存在の有無。それを確かめるために、俺はここまで来たんだろう?
なのに、なに怖じ気付いてるんだよ…。
ここまで来て、「怖かったから逃げた」じゃ男が廃る。男として情けないと思う。
何より、アリスを呼び出した本人である俺がこのままどこかへ逃げてしまったら、アリスに悪いなぁ、と思う。
それどころか、悲しむんじゃないだろうか。
「折角…仕事だと思って、白装束の服を洗ってきたのに…っ」と。
「……それだけはないから安心して」
後ろから冷静なアリスのツッコミが聞こえた。
……なるほど。
先程から気になっていたのだが―――もしかしたらアリスは、人の心が読めるのかもしれない。

