死神アリス

誰かに言ってしまえば、それをまた誰かが誰かに言ってしまう。
そうなったらアリスの価値が少しずつ下がってしまうではないか。
だから俺は口外するつもりはない。
アリスの価値をそのままにするために。

――そして俺は、あの言葉を叫び終えた。
アリスは本当に来るのだろうか。いや実在するのだろうか。
心臓の鼓動がさっきより早くなる。手に変な汗が滲み出てくる。思わず喉を鳴らせてしまった。


―――さあ、来い…!死神のアリス…!


―――ザッ

「!!」

びくっと俺の体が反応した。
今確かに草を踏む音が後ろから聞こえた。…今度は猫ではなく、人が草を踏むような音だ。
いる。確実に誰か、後ろにいる。

そして、声も―――


「君が、あたしを呼んだのね?」