僕が、屋上で見た光景。
それは、彼女がフェンスの向こうで、下の景色を見下ろしていて、そして――
今にも下に落ちようとしているところだった。
「――――っ!!??」
僕は彼女の名前を叫んだ。
すると彼女はその声に反応し、こちらに振り向き、
「……あ、そっか」
そう一言呟き、僕に問うた。
「ねぇ、慎くん。世界は、どうしてこんなに暗いのかな?」
そう問いかける彼女の瞳には、何も映っていなかった。
虚ろで、僕の目を見ているようで見ていなかった。
彼女を、助けたかった。
けど、なにも言えなかった。
何も、答えられなかった。
続けて彼女は、虚ろな表情で下を向き、
「…………慎くん、私ね、慎くんと一緒にいる時は、…一緒にいる時だけは、世界が少しだけ光って見えた。
ねぇ、慎くん。
私ね、もう生きていける気がしないんだ。
だから…」
すぅ、と彼女は息を吸い込み、
精一杯の笑顔で、
「さよなら」
そう言った。

