死神アリス




――――ん?


今度は俺が「?」になる番だった。
今、この目の前のロリ少女はなんて言った?



『私は、みんなの言う、“アリス”よ。』



―――うん。
これは理解出来る。


きっと目の前の少女は“アリス”なんだろう。
それは分かる。分かっている。


だが、しかし、


『…確かに見た目は幼いけど、これでも、ヒトを殺すのは慣れてる』


…俺の聞き間違いでなければ、アリスは確かに、こう言っていたはずだ。


―――ヒトを殺すのは慣れてる。


『慣れてる』と言うことは、つまり――アリスは人を殺すのに『慣れてしまう』くらい、ずっと人を殺してきたのだ。



ずっと、ずっと前から…。



――――ということは。
目の前の少女は、正真正銘、あの都市伝説の“死神アリス”なのだ。



憎い人を殺してくれる、あの――



「………そん、な…」



死神アリスのことは、ずっと前から、知りたい、と思っていた。


しかし、彼女の存在を知ると共に、…悲しみと苦しみを混ぜたような感情が、心の内から溢れるように出てきた。



なんて。なんて可哀相な少女なのだろう。
本来なら、普通に友達と遊んだり、勉強したりしている年頃なのに。



「………」
呆然としている俺の心を読んだのか、



「………私は、“カワイソウ”じゃないよ?」


ふっ、と薄くアリスは笑って言った。
…俺はそれを見て、とても悲しい笑顔だ、とそう思った。



どうして、彼女は、…アリスは、こんな風になってしまったのだろう。


なぜ。…どうして?