――――全く、馬鹿げている。
俺は、はぁ…、と溜息をつきながら、じっとアリスを見た。
そして、思い出した。
あれ。
何いきなり後ろ振り返って叫んでんだ俺。
そう。
さっきまで俺は、「後ろを振り向くのが怖いよー」と弱気で、がたがたと震えていたのに、なぜかアリスの「ごめんね」でその震えは止まり、…それどころか俺はいきなり後ろを振り向いて「そんなことはない!」…と叫んでしまったのだ。
な、なんというか……
さっきから、俺って恥ずかしい奴…だな。
………。
…………。
……………。
ぐ…ぐぅわああああああ!
くっそーっ!また恥ずかしいことしちまったぜええええ!このやろー!俺のばか!ばか!ばかああああああああ!
俺は地面に膝を付き、手をグーにして地面をどすっ、どすっ、と殴った。
溢れるように沸いて出てきた、どうしようもない羞恥の感情。
その感情を消すために、俺はひたすら地面を殴り続けた。だってどうしようもないんだもん。でも手痛ぇ。
くそっ。くそ…っ!
ちょ、でも、おい…目から汗が出て来そうだぜ…。ぐすっ。
そんな俺を見て、
「………?」
アリスはきょとん、と不思議そうに首を傾げた。
そして――――
「私は、みんなの言う、“アリス”よ。…確かに見た目は幼いけど、これでも、ヒトを殺すのは慣れてる」
―――静かにそう言った。

