「わっ、わかった、……俺がベランダに出してくるよ!」







二戸 梨杏の顔色が一瞬にして晴れる。







――負けた、俺の負けだ。






二戸の“イヤだもん!”に完敗をした。







俺も嫌な事があったら“イヤだもん!”を使ってみようかな?






きっと、俺が使ったら、絶対に皆完全に引くだろうな――。







――イヤだもん!







良い言葉だな。







ベランダの大きなガラス窓をガラガラと開けて、ジョウログモの止まっている木の枝をそっと下へ置く。





ジョウログモが木の枝から離れる。






「好きな所へ、行けよ――!」






中村先生は一言いった後、ベランダのガラス窓を静かに閉めた。