そうしなきゃ、あたしが辛いばかり。
今すぐは無理。
でも、徐々に…。
でも、やっぱりヤダよ…
そう思って、真面目に黒板を書き写してるレイタを見ていたら
――――カシャンッ…
手に持っていたペンが静に音をたてて床に落ちた。
しかもレイタのイスの真下に…。
あーあ…
ついてない…。
あたしが手を伸ばして取ろうとすると、
「大丈夫、取ってあげる」
優しい声が上から降ってきた。
見るとレイタが腕を伸ばしてペンを取ってくれた。
テニス部のレイタは筋肉が程よくついた腕をしてた。
小麦色に焼けた肌によく似合っていた。
そしてあたしに拾ったペンを渡してくれた。
あたしはうれしくて、笑顔で
「ありがとぉ…」
そういった。
レイタは「おぉ」と言うと前を向いた。
なんでだろ…。
これだけのことなのにすごい心臓が忙しなく動く。
レイタが少し触れた指先まで、ドクッドクッと脈打つのが分かる。
顔が赤くなりそうだった。
でも、誰かが言ってた。
『本当に好きな人とは結ばれない運命なんだよ』
そう思うと、
あたしのペンが落ちたのはたまたまで
レイタはだれにでも優しいから
きっとあたしじゃなくても拾ってた。
…、馬鹿みたい。
自分だけ特別って思ってた。
あはは…、変なの…。

