一緒に帰り始めてもう、何分くらい過ぎたんだろう。

きっともう、一時間や二時間くらいは経っているはずだった。

さっきからずっと、今にも雨は降り出しそうなのに、

ちっとも降りやしないであたしはそのまま家についた。



"じゃあまた、明日学校頑張ろうな"って、将は最後に笑顔で見送った。

いつもどおり、電車が発車するまで居てくれた。

バイバイをした直後の、電車の中ではずっと、

将の表情がちらついてちらついて離れなかったけど、今はどうやら落ち着いた。

ぼんやりとした笑った顔が、うっすらと思い出せるくらい。

あたしの頭の構造は、なんて楽なんだろう。



実感も沸かずに、涙も出ないくらい。

半年間が、決して薄かったわけじゃないんだけれど。



自分の部屋のベッドに座る。

あのときのあたしは馬鹿だったから、将が好きだった紫にはまった。

ベッドカバーから、カーテンから。

ちょうどよく模様替えに困っていたからって、紫に統一して。

思い返せば馬鹿だった。



「目が痛くなりそ・・・」



窓から下を覗いても、紫と黒のボーダー柄のパーカーは見えなくて、

どこを見たって、紫から連想するものは何もなくなった。



悲しくない。

なのに一回、一回だけ。

瞬きをしたときに一粒  手の甲に落ちた。



何がいけなかったんだろう。

漠然とただ、先が見えなくて、これじゃあ二人とも、変われない、と。

あたしに他に好きな人が出来たわけでもなくて、当てがあるわけでもない。

将自体が嫌いになったわけでもないし、変な噂を聞いたわけでもない。

まったく楽しくなくなったわけでもない。



だったら付き合っておけばいいのに。とは今も思わない。

だからこれは、後悔じゃない。

ぽっかりと空いてしまった空白が、頭の中で飲み込めないだけ。



紫色のカーテンが一回、風でふわりと揺れたとき、

思い出したかのように眠気が襲った。

なんか、疲れちゃったよ。