「そのまさかだよ。」

フィルはニヤッと笑った。

「こいつらは、今、親父のいいなりさ。お前の言葉なんて、聞こえてねぇよ。」

ゲラゲラと、また下品に笑う。

「そんな魔法をいつ得た!?」

「ロッツォよ、いつからお前はそんなに偉そうになったんだ?」

ムーシュは太い声で問う。

アゴヒゲを何度も撫でる。

「フィルに聞いたぞ。ルーゼンごときに、負けているではないか。」

「国王、私にはこの争いに何の意味があるかわかりません。しかし、反乱には意味があるのはわかる。」

「ふむ……。これは計算外だった。」

「……!?」

ムーシュの言葉に、ロッツォは動揺を隠せない。

“計算外”だと?

何を言っているんだ?

国王も王子も……本当にイカれている。

「どういう意味だ!?」

国王の背後から、人影が現れた。

「俺が説明してやろうか?」

現れた人影は、褐色肌に黒髪……。

黒い服に、左肩には、十字架に亀裂の入ったタトゥー。

「“異人”か……!?」

「俺等以外の奴は、そう呼ぶなぁ。俺の名は、ローズ。よろしくな♪」

彼は、うなじ辺りで綺麗に揃えられた髪をてぐしでといた。

目は細く、たれ目になった。