この男は、自分の権力を護ることしか頭にない。

こんな奴のために、私たちは命を差し出すのか?

ロッツォだけでなく、同行していた騎士たちも、同じことを思った。

「フィル王子、ここは一度国へ戻り、策を練りましょう!」

ロッツォは本心を胸の奥に押し込み、状況を見て、逃げることにした。

「策を練ったって、私たちルーゼンの魔術には勝てませんよ。」

ブワッッ!!

男の足元から風が巻き起こり、一瞬にして姿をくらませた。

「ルーゼン……あの国が無ければ!」

フィルは鋭い目付きで、ルーゼン・ウルクの城がある方角を睨んだ。



リィナは魂が抜けたように立ち尽くしていた。

「しっかりしろ!何かの間違いかもしれない。」

レイドが声を掛けても反応しない。

彼女は放心状態に陥った。

「どうして……誰が……そんなことを……。」

彼女はずっとそう呟いていた。

「リィナ!お前が動揺して何になるんだよ!しっかりしろ!国民を信じろ!」

レイドは説教するかの様に、リィナに話しかけたが、それでも涙を流し続けた。

「リィナ王女様!大変です!」