お母様より3つ年上だった。

魔術の腕も素晴らしくて、人の上に立つのに相応しい方だった。

しかし、決して国民や王国騎士たちを見下したり、下級呼ばわりなどしなかった。

「みんな、家族だ。」

いつもそう言っていた。

だから、国民の誰かが悪いことをすれば見逃さずに叱ったし、いいことをすれば褒めていた。

私が勝手に城下町へ行ってもみんなは私と遊んでくれた。

お父様は、私が勝手に城下町へ行ったことを怒ったが、遊んでくれたみんなに怒らなかった。

国王は国民を信じているから。

そんなお父様の方針を、心を、私は継ぎたい。

凛々しくて、立派で、たくましいお父様も、お母様が死んだときは、一緒に大粒の涙を流し、悲しんだ。

私が見た、お父様の涙はその時だけだった。

お父様の涙はいまでも、目に焼き付いて離れない。

お母様が死んでからは、今まで以上に国民を愛した。

もちろん私も愛してくれたし、私もお父様が大好きだった。

お母様が死んでから4年後―…

8年前の“異人襲撃”で、国王・ハインドは35歳でこの世に別れを告げた。

王座の間で、城に侵入した異人と、魔法で対決した。