カモメは慌ただしく飛んでいた。

夕方に港から船が出るとき、彼らは踊り出す。

「パパ!早く早く!」

「リィナ、そんな慌てなくても船は逃げんよ。」

「違うの!早く乗らなきゃ星が出ちゃう!」

リィナは父の手を握って足早に船に乗り込む。

船に乗るやいやな、屋外のテラスに駆けた。

「間に合った!パパ!ママが会いに来てくれるよ!」

死んだ人の魂は空に還り、やがて星と成す。

これがこの国の理であった。

「はは、今日も会えるかな?」

2人は手すりにもたれ、空を眺めた。

時刻は夕暮れ。

オレンジとネイビーのグラデーション空には、一番星が輝く。

「リィナ。」

「なぁに?」

「ママがいなくて寂しくないか?」

「うんっ!私にはパパがいるんだもん。寂しくなんかないよ。」

リィナは素直に笑った。

「そうか。もし、パパもいなくなったらどうする?」

「……パパ、どこかに行っちゃうの?」

「いいや、どこにも行かないさ。ただ、聞いてみただけだ。」

国王は白い歯を見せて笑った。

「その時は……」

「?」

「その時は、私が国王になってみんなを守る!」