「母親たちは、俺たち子どもを守ろうとして、奴等に歯向かった。『せっかく助けに来たのに何を言う!』って偉そうに言いやがった。そして、母親たちは殺された。」
彼の怒りはただならぬものだった。
「だが、その時、レイドの力が発揮されたんだ。」
「レイドの……?」
「産まれてたった2ヶ月のレイドが、魔法を放った。」
「……!?」
リィナにはその言葉をすぐに理解できなかった。
「恐怖のせいか、母親が目の前で殺されたせいか、わからねぇが“ヤマタノオロチ”を発動した。一瞬にして“聖人”たちは炎に燃えて死んだ。」
「レイドにそんな力が……。」
彼は黙って頷いた。
「生き延びた俺たちは里を去り、今の里を作った。」
「…………。」
「その時は、俺たち5人以外にも子どもはいたさ。ただ、8年前のルーゼン襲撃で何人か死んだ。今は、俺たちだけ。」
「…………。」
バリックは立ち上がった。
「これは俺たちの復讐なんだ。見放した“聖人”どもの清掃。お前はそれに力を貸すんだ。」
「今、何て!?」
バリックは答えずに部屋を出ていった。