ロイドは足を組んだ。

「オルディンの闇系魔法の一種、“記憶操作”の魔法でレイドの記憶を消した。」

「9歳までの記憶を消したのもあなた!?」

「それは違うな。単なる記憶喪失だ。」

オルディンは冷静に答えた。

「レイドが貴様等、ルーゼンの人間と“聖人”に関わってきた記憶を消して、新しい記憶に書き換えたのさ。」

「新しい記憶……?」

「あぁ、作った記憶さ。」

リィナは短時間では理解できなかった。

新しい記憶を作った?

どういうこと?

「“異人”として生きるために、今までオレ達がしてきたことの記憶を埋めた。プラスして、お前たち“聖人”への敵対心を芽生えさせる記憶を作ったのさ。」

「そんなことできるわけが……!」

「不可能を可能にする。それが私の魔法だ。」

オルディンは手ぐしで髪をとく。

次にバリックが語った。

「記憶を変えたらすぐに羽根も生やせた。やっぱりレイドはすげぇんだ。」

「…………!!」

リィナは何も言えなかった。

「記憶を消す前に、アンタの名前を叫んでたよ。」

「……え?」

リィナは知らぬ間に涙を流していた。