ペラッペラッ……

リィナは必死にページをめくる。

フィルも横から並んだ文字を見つめた。

「あ!」

「あった!」

2人は声を揃えた。

「“黒き翼の民”……。」

リィナは“黒き翼の民”という言葉を探していた。

「“異人”と呼ばれる前の彼等の呼び名……!」



“黒き翼の民”

背中に黒き翼を生やせ、空を自由に駆け回る人間。

正式名は、ヴァペスリア民。

この種の人間は、男しか生まれない。

他の種の人間と交わり、子を成しても、不思議なことにヴァペスリア民の男が生まれる。

彼等の秘めたる魔力は、計り知れない。

全種類の魔術を極めるのも、一種の魔術を極めるのも、彼等には容易い。

魔法を発動させる時、瞳を赤へ変え、魔法陣を召喚する。

呪文はなく、魔力に命令するかのように吠える。

しかし、今より20年前。

ヴァペスリア民の血はたちまち絶えた。

昔は他の種の人間との交わりを好み、情報通の彼等は情報を提供していた。

そのことを知らぬ子孫たちは、ヴァペスリア民を“異人”と読んだ。