受験者の中の数人が話をしていた。
レイドは周囲にバレない様に、支柱の影に隠れた。
その会話を彼はこっそり聞いた。
「なぜ、褐色の肌の者が王女に遣われてるんだ?」
「さぁ…。しかし、気になる。」
「あの様な容姿の人間は、以前に見たことがあるな。」
次の言葉に、レイドは絶句する。
「8年前、国を襲った“異人”と同じ褐色で黒髪だ。」
†
怪しい魔力の主が見つからないまま、昼から第二次審査が始まった。
言葉遣いや姿勢を、厳しく指導され、どれだけ礼儀正しくできるかをみられる。
リィナの座っている椅子の隣に立ち、その様子をレイドは見ていた。
しかし、頭の中はあの言葉でいっぱいだった。
オレが、リィナの父さんを殺した奴等と同じ人種だって―?
その疑問に誰かが答えるはずもなかった。
リィナに聞こうか?
でも、もしそれが本当だったら?
逆に嘘だったら?
そう考えると聞けなかった。
返ってくる答えが怖いから。
リィナなら、本当のことを教えてくれるはず―。
自分に言い聞かせて、気持ちを切り替えた。

