黒騎士-ブラックナイト-


受験者の中の数人が話をしていた。

レイドは周囲にバレない様に、支柱の影に隠れた。

その会話を彼はこっそり聞いた。

「なぜ、褐色の肌の者が王女に遣われてるんだ?」

「さぁ…。しかし、気になる。」

「あの様な容姿の人間は、以前に見たことがあるな。」

次の言葉に、レイドは絶句する。

「8年前、国を襲った“異人”と同じ褐色で黒髪だ。」



怪しい魔力の主が見つからないまま、昼から第二次審査が始まった。

言葉遣いや姿勢を、厳しく指導され、どれだけ礼儀正しくできるかをみられる。

リィナの座っている椅子の隣に立ち、その様子をレイドは見ていた。

しかし、頭の中はあの言葉でいっぱいだった。

オレが、リィナの父さんを殺した奴等と同じ人種だって―?

その疑問に誰かが答えるはずもなかった。

リィナに聞こうか?

でも、もしそれが本当だったら?

逆に嘘だったら?

そう考えると聞けなかった。

返ってくる答えが怖いから。

リィナなら、本当のことを教えてくれるはず―。

自分に言い聞かせて、気持ちを切り替えた。